首振りチックの改善事例【8歳女の子】チックへの認知行動療法(CBIT/ハビットリバーサル・呼吸法・ERP)

【クライアント】

今回のクライアントは小学2年生(8歳)の女の子、セッション中いつも漢字を書いてお勉強している、笑顔が可愛いAちゃん(仮名)。

【ターゲットにしたチック症状】

首振りチック・・・頭を上下に振る。左右どちらかの肩をすくめながら、または、肩に顎を擦り合わせる様に首を左右に動かす。

初回のインテーク面接時は10秒間に数回と絶えず首振りチックが出ていた

首を振りすぎて、首が痛くなる、具合が悪くなることも度々あった。

【機能分析】

周囲がガヤガヤしている騒がしいうるさい状況、テレビやYouTubeをみている時、食事中、運動をしている時の待ち時間にチック症状が多くなる。

※機能分析とは、どの様な時にチックが出るか?増えているのか?チックが継続されているか?または出ていないか?などを見極めます。

【セッション】

7月後半からチック症状への認知行動療法(ハビットリバーサル・呼吸法/CBIT)のセッションを開始する。

先ずは前駆衝動(チックが出る前のムズムズ感など)への気付きがあるかどうかの確認の為、アウェアネストレーニング(Catch the tic)を行う。

※ハビットリバーサルや呼吸法によりチック症状を改善させる為には、チックが随意運動(意識的)でなければなりません、不随意運動(無意識)の場合はアウェアネストレーニング(気づきの練習)を行い、無意識のチックを意識的なものに変えるトレーニングを行います。

Aちゃんのチック症状が随意運動である事が確認された為、ハビットリバーサルを行う。

ハビットリバーサルにおいて大事なことは「拮抗反応」の選択です。

拮抗反応を簡単に説明すると、チックが同時にできない、競合する動作の事を拮抗反応といいます。

※拮抗反応には基本的なものもありますが、個々に適した拮抗反応をあみだし、それらを適切に使用する事がチック改善のポイントです(難しい事ではないので、考え方さえ理解出来ていれば誰でも行う事ができます)。

首振りチックの基本的な拮抗反応は、顎を胸のほうに押し下げる、または胸に押し当て、首が動かないようにやや緊張させ固定させます、それと同時に深くゆっくりと深呼吸(呼吸法の1つ)を行います。

ハビットリバーサルのトレーニングでは、チックが出る前のムズムズ感など、つまり前駆衝動を感じたら、拮抗反応を使い、その前駆衝動が無くなるまで、ターゲットにしたチックを出さずにその状態を維持します。

前駆衝動が無くなる時間はチックの種類や個々に異なり、何分何十分もかかる場合もあれば、数秒で消え失せてしまうことも。

Aちゃんの首振りチックは拮抗反応を使い、前駆衝動が20秒くらいでなくなることが多かっです。

セッション中に適切な拮抗反応を見つけ、前駆衝動を消せる事ができたら、今度はホームワークとして、1日決まったタイミングや時間で、首振りチックの前駆衝動を無くすトレーニングを行います。

Aちゃんの首振りチックの場合は、ハビットリバーサル開始後、1日30分のホームワークを行うことにより、1週間後には、セッション開始前に比べて、首振りチックが約7割減、更に1週間後には首振りチックが完全に無くなりましまた。

【経過観察】

セッション開始から約1ヶ月で、ターゲットにしたチック症状が無くなったので、現在は経過観察及び、今後新たなチック症状が発症した時の為に、親子でハビットリバーサル(CBIT)や呼吸法を行い、チックの悪化を防ぎ改善出来るよう、自己対処法の指導を行っています。

※今回ターゲットにした首振りチックの前駆衝動が仮に再発したとしても、指導した拮抗反応や呼吸法を行うことにより、首振りチックの再燃の可能性は低いと私は考えています。

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Aちゃんの場合、幸いにもターゲットにした首振りチックは完全になくなりましたが、チック症状への認知行動療法(CBIT/ハビットリバーサル・呼吸法・ERP)を行なったからといって、全てのチックがゼロになるとは限りません

完全に無くなるチック症状もありますが、チックが出る頻度、その強さや大きさが軽減し、チックは多少あるものの、社会的に目立ちにくくなり、総体的にチック症状が改善し、生活に支障が無くなっていくイメージをお持ち頂ければ幸いです。

現在私がセッションを行う際に、クライアントの方々に必ずご説明することがございます。

これまで多くの方にチック症状への認知行動療法を行い、また私自身重度のトゥレット症当事者であった経験から、チック症状とはアレルギーなどと同様に、体質的(脳機能含め)なものが大きいのではないかと個人的に感じております。

一過性のチック症状などでない限り、治療を行なったからといって、その体質は直ぐに改善されるものではなく、長期的な視点で対応していく必要がある

つまり、持続性チック症やトゥレット症の方は、チックが出やすい体質であり、とあるチックが無くなったとしても、また新たなチックが発症、同じチックが再発、それらの増減を繰り返してしまう可能性がある

だからこそ、それらの発症したチックを悪化させず、チックがあったとしても、その頻度や大きさが弱い穏やかな状態を維持、コントロールする事が必要であり、その対処法を当事者はもとより、親御さんも知っておくことが大切です

対処法がわかれば、チック症状に対する様々な不安や心配を、少なからず減らす事が出来るのではないでしょうか?

その方法のひとつがチック症状への認知行動療法(CBIT/ハビットリバーサル・呼吸法・ERP)であるということです。

チック症状への認知行動療法も含め、必要であれば薬物療法など様々な対症療法を用いながら、チック症状の悪化を防ぎ、当事者のQOL(生活の質)を低下させない

そして、お子様の成長と共に健全な生活の中から、その体質が改善されていくことを目指す、これらが今私達に出来ることなのかもしれません。