行動療法(HRT/CBIT・ERP)に向いてる子?向いてない子?

チックに対する行動療法/認知行動療法を行う前に、実は知っておくべきこと、注意点があります。本ブログではそれらをご説明いたします。

先ず、チックに対して効果的な行動療法/認知行動療法は、現段階で大きくわけて2つあります。

◆ ハビットリバーサル(HRT)/シービット(CBIT)

◆ 暴露反応妨害法(ERP)

ここ数年欧米では、チックに対する行動療法(behavioural therapy : BT)の有効性がいくつもの論文より示されており、HRT/CBITと、ERP(暴露反応妨害法)は、薬物療法同様にチック症トゥレット症に対する治療(対症療法)として推奨されています。

しかし行動療法/認知行動療法は、全ての方に効果があるわけではありません。そして、チックを治すことを目的としたものでもありません。

チックに対する行動療法/認知行動療法とは、チックを管理するスキルを身に付ける、いわばトレーニングです。

悪化してしまったチックをどうしたら軽減できるのか?

チックが悪化しないためにはどうしたらいいのか?

チックと上手に付き合っていくためのスキルを学んでいただきます。

チックには波があるものの、大人になるにつれて軽快してことが多いです。

それまでの間、チックと上手に付き合っていく方法(コントロール方法)のひとつだとお考え下さい。

さて、表題に記載した通り、行動療法に向いてる子向いてない子とは、「ハビットリバーサル/CBIT・ERP・呼吸法で効果が出やすい子・出にくい子」ということです。

薬物療法もそうですが、行動療法もその効果は個々に異なります。とっても効果がある場合と、あまり効果がない場合などがあります。

それは何故なのか?

うちの子は行動療法でチックを軽減できるのかしら?

そのような疑問をお持ちの親御さんも多いと思います。

それでは、どのようなお子さんが行動療法、とくにハビットリバーサル/CBITで効果を出せる可能性があるのか、逆にどのようなお子さんには向いていないのかをご説明いたします。

ERPのトレーニング方法はHRT/CBITとは異なりますのでここでは割愛いたします。

POINT❶ チックが無意識でない

チックが起こる前には、ムズムズのようななんとも言えない不快感があったりします。ムズムズやチックが起こりそうな感覚に十分な気付きがあれば、HRT/CBITにチャレンジできる可能性があります。

一方、ムズムズがわからなかったり、チックが無意識に起こっている場合は、HRT/CBITでの改善は難しくなる可能性が高いです。

お子さんがムズムズに気付けているか、アウェネストレーニング(気付きの練習) をやってみましょう。

※無意識のチックが多い場合でも、トレーニングや年齢を重ねると共に、気付きが改善する場合もあります。

POINT❷ お子さんがチックで困っている

本人がチックをいくらか受け止めた上で、少しでも改善したいと治療への前向きな姿勢があること大切です。

なぜなら、行動療法は前述した通りある意味トレーニングであり、本人の継続的な努力が必要だからです。

親御さんにとって気になるチックがあったとしても、お子さんが全く気にしていない場合はよくあります。

行動療法は強制するものではありません、チックがいくらかあっても本人が困っていなければ、それはまだ治療のタイミングではないのかもしれません。

POINT❸ チック以外に大きな問題がない

トレーニングに支障をきたすような併存疾患や家庭環境に大きな問題がないこと。

例えばADHDやASD、不安障害や知的障害は症状の程度によってトレーニングに支障をきたす場合があります。併存疾患が重度の場合は要注意です。

POINT❹ 8歳以上である

年齢が低い幼い子どもの場合、行動療法に取り組むにはまだ早い可能性が高いです。7歳で出来るお子さんもいれば、10歳でも出来ないお子さんがいらっしゃいます。

行動療法士のお話を理解できるくらいの年齢になっていることが好ましいです。

POINT❺ チックが重症ではない

HRT/CBITは、チックが重症の患者には効果を発揮しにくいです。衝動が強すぎると、それに比例してトレーニングがよりハードになります。

行動療法は、中等度以下のチック症トゥレット症患者にオススメです。

以上、5つのポイントが全てマルであれば、HRT/CBITを検討してみてるのも良いでしょう。

しかしながら、ひとつでもバツがあれば、HRT/CBITに取り組むのは難しいかもしれません。

HRT/CBITが難しそうな場合はどうする?

それでも行動療法に興味がある方は、ERP(暴露反応妨害法)を検討してみましょう。5つのポイントがすべてマルでなかったとしてもERPは行える可能性があります。

※ERPについてはこちらで少し紹介しております。

そもそもHRT/CBITとERP、どちらの行動療法を選択するのかは、お子さんの状態をアセスメントしながら判断していきます。

いずれにしてもまずは、お子さんのチックの種類や特性、併発している疾患(発達障害、不安、強迫など)、環境等を踏まえ、薬物療法やその他の治療法も含めて、どのような治療がお子さんにとって最善なのか検討しいくことが必要です。