❶チックへの認知行動療法を受けてみようと思った理由を教えてください。
息子は小2で口の中を噛むチックが出たことをきっかけに、薬を飲み始めましたが、その後はかかりつけの精神科にチックの相談をするたびに薬の増量を勧められるばかりで、薬の量が増えることへの不安がありました。薬が増えたからと言って息子の症状がすぐになくなるとも思えませんでした。
認知行動療法でチックの症状を改善できることを知り、息子自身が自分でチックを対処できる術を身につけることで息子が生きやすくなるだろうという思いで申し込みました。
❷セッションを受ける前ご不安だったことなど何かございますか?
息子のASDとADHDの特性から、自分のペースを崩せなかったり、物事に集中して取り組めなかったり、自分の思うようにならないと気持ちが乱れてコントロールが効かなくなってしまったりするので、いざセッションを始めても前向きに取り組めなかったらどうしようという不安がありました。
❸セッションを受ける前のお子さんのチックの種類や状態を教えて下さい。
セッションを始めた時期は、とてもチックが落ち着いていた時期でした。どちらかと言うと強迫的なチックに困っていました。
・飼い犬を叩きたくなる、1日10回くらい(犬が近くにいる時に出る)、少しはコントロールできる時もある(叩く力を弱めている)、背中をグーで叩きたくなる(大事だからやってしまう)
・吹き抜けの柵を跨ぎたくなる、1日1〜2回
・腰をくねくねする、10分に1回くらい
❹セッションやホームワークではどの様なことを行いましたか?またその時のお子さんの様子を教えて下さい。
はじめに、機能分析とストレス要因を取り除くことの重要性を教えていただきました。
息子自身が1番困っていた「飼い犬を叩きたくなる衝動」に焦点をあてて、初めは1日30分あえて犬と向き合う時間を作り、衝動に向き合いながらチックを出さないというERPの考え方を教えていただき、トレーニングをしました。
ホームワークでは、30分の間に叩きたくなった回数と、実際に叩いてしまった回数、衝動の大きさ(10段階)を5分おきにトレーニング表に記入しました。
息子にとって、衝動と向き合いながら我慢する時間はとても苦痛な時間でしたが、上手に我慢できた時は褒めちぎって、出来る限り親が盛り上げて頑張りたくなる雰囲気を作りました。「我慢できる」「対処できる」ことが息子なりに分かると、衝動自体がほとんど起こらなくなりました。
息子が1人でお留守番している時間に衝動が強くなるパターンが多く、記録したことで分析することができたのが良かったです。
谷先生のアドバイスを受け、我慢した回数をポイントにして、ポイントが貯まるとご褒美が貰えるというシステムを取り入れたことで、息子のモチベーションを保つことができました。
改善が見られたので、2回目以降は1日のうちにあった衝動の数と叩いてしまった数と衝動の大きさを記録しました。
セッションでは、拮抗反応を指導していただきました。息子のチックの状況では、実際にどのような動作が有効なのか考えながら話してくださり、とても分かりやすかったです。
❺セッションが終了した現在のチックの状態を教えて下さい。
「飼い犬を叩く」チックはほぼ出なくなりました。
それ以外の動作はちょこちょこ出ていますが、息子自身が我慢して対処しており、生活に支障が出るほどのチックは起きていません。
❻セッションをお受けになられたお子さんの感想がもしあれば教えて下さい。
「セッションのおかげでチックが落ち着いた。」
❼チックへの認知行動療法に対するお母様の感想を教えて下さい。
まず、谷先生自身がトゥレット症当事者であり、息子に対しての理解や共感が深くあったことが、何より素晴らしかったです。
今までチックのことを相談できる相手がほとんど居なく、かかりつけの精神科医にも詳しく話を聞いてもらえず、学校の先生やお友だちにも説明はしても、本当に分かってもらえてるのか分からない状態だった中、息子や私の言葉足らずな話を汲み取って、手に取るように分かってもらえたことが、私も息子も安心できました。
トレーニングで大変だったことは、時間を確保して、あえて衝動と向き合うという苦痛を、息子のモチベーションを保ちながら継続することです。息子の下に弟と妹もいるので、家族の協力も必要でした。
チックを「我慢できた」という成功が増えると、息子の自信になったようでした。チックが出ても「対処できる」と思えたことで、息子の気持ちも安定して、パニックになったり取り乱したりする回数が減りました。
現在息子は不登校なので、将来社会に出られるのか心配であると相談した時に、谷先生自身の学生時代の経験や現在のお話をうかがい、不安が多少軽減して今息子に出来ることをしてあげようと前向きな気持ちになれました。
これまでなかなか当事者の方とお話しする機会がなかったので、とても参考になりましたし心強く感じました。
❽チックには様々な治療法がありますが、チックへの認知行動療法はどの様な方にお勧めできますか?
自分自身でチックを改善したい、コントロールしたいと考えている方にお勧めしたいです。
❾最後にチックでお悩みの親御さんは大変多くいらっしゃます、その様な方にお伝え出来る事や、アンケートにない内容でお伝えしたい事がもしありましたらご記載をお願い致します。
チックに悩む方は数多くいらっしゃるとは思いますが、私は身近に同じような悩みを持つ方と出会うことができずにいました。
息子のチックのバリエーションが増えて、理解しがたい行動が増えて、誰が理解してくれるのか、受け止めてくれるのか、共感してくれるのか、様々な場所で相談したり、病院を転々としたり、遠方の病院へ行ったり、悩みながら手探りな状態で現在に至ります。
今回、この認知行動療法のセッションを通して、チックの悩みを吐き出すことができたことで、私も息子も精神的に救われました。この認知行動療法がもっと普及して、多くの方が少しでも生きやすくなることを願っています。