チックへの認知行動療法(ハビットリバーサル・呼吸法/CBIT/ERP)による自傷系運動チックの改善事例【大阪府17歳男性】
現在10名くらいの当事者(10歳から40代の男女)の方に、チック症状への認知行動療法(ハビットリバーサル・呼吸法/CBIT/ERP)を行っています。
今回はその中の一人、17歳の男の子の自傷系複雑運動チックが劇的に改善したので投稿いたします。
彼は数年前から自傷系の複雑運動チックがいくつかあり、今回メインターゲットとしたチックは、当事者が最も生活に支障を感じている、両手小指を折ってしまうチックです。
チックの頻度・強さ共に重度であり、チックが少しでも出ないよう、またチックによる怪我が少しでも軽減されるよう、両手それぞれの小指と薬指を24時間常にテーピングで一つに巻き付け、それも何年もの間固定されていました。
更に鼻をグーで殴ってしまうチックもあり、外傷を少しでも和らげる為に、両手人差し指と中指にもテーピングが巻き付けられていました。
軽度のチック症の方からすれば驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、この様な事例は決して珍しい事ではありません。
叩いたり殴ってしまうチックがある方は、その外傷を少しでも和らげる為に、様々な方法でガードする物、防具を身に付けています。
チックだけでも辛いのに、更に痛みがその苦しみを倍増させます、それを少しでも和らげる為の苦肉の策です。
実際私も自傷系の運動チックが酷かった頃は、リストバンドなどを患部に巻き付け、少しでも痛みが軽減するよう保護していました。
2021年3月の頭からセッションを開始し、既に7回目のセッションが終了した所です、結果から申し上げるとセッション開始後1ヶ月強で、ターゲットにした自傷系運動チックはなくなり、指を固定していた全てのテーピングが外れ、今は5本の指が自由に動かせる状態で日常を過ごす事が出来るようになっています。
先日のセッションでクライアントからその事実を伝えられました、6回目のセッション時に与えたホームワークでは、1日3時間テーピングを外して生活する練習を、指導した拮抗反応及び呼吸法を使いチックをコントロールしながら頑張ってみましょう!というものでした。
しかし彼は自分の意思で与えたホームワーク以上の事を成し遂げ、24時間テーピングを外し、様々な不安にも打ち勝ちチックを改善させました。
認知行動療法を指導させて頂いている者として、こんなに嬉しい事はありません。
実は先日のセッション時、彼はチックとは無関係に体調が優れなかったため、本来であればセッションを延期しても良かったのですが、セッションを短めにお願いできますかと申し出があり、現在の状態だけお伺いする為に少しの間Zoomに接続しました。
よくよくお話をお伺いしていると、指を固定していたテーピングを全て外して生活している事、テーピングを24時間外していてもチックが全く出なくなった事を私に直接報告したかったようです。
私が学生の頃、出来ることなら医師になり、トゥレットの研究を行い、いつしかこの病気を治す方法を見つけられたらなどと淡い夢を抱いた事があります。
現実問題当時はチックのせいでまともに勉強など出来る訳もなく、高校を卒業するのがやっと、経済的な理由もあり、当然その様な夢は簡単に打ち砕かれたわけなのですが、人生どの様な事が待ち受けているか分かりません。
これまで何人もの方のチック症状を改善させて上げることが出来ていますが、残念ながら全ての方のチック症状を改善出来るわけでもありません。
症状の種類、その度合い、併存する疾患、個々にその内容は異なり、認知行動療法が効果を発揮できない場合もございます。
私が行う認知行動療法は、チックとは何なのか?どうしてチックが出るのか?その理由と理屈を学び、その上でどう対処する事ができるのか、その対症法を当事者目線(私自身が重度のトゥレット症でした)で指導させていただきます。
少し話は逸れてしまいましたが、今回の男の子の様に、ちょっとした事で大きくチック症状が改善する事は往々にしてあります。
彼は今回投稿した以外の運動チックや音声チックも、この度のセッションにより実は改善しています、セッションはまだ継続中なので、その経過はまた改めて投稿致します。
以前にも投稿した自傷系運動チックを改善された当事者の方同様に、今回の男の子の未来もきっと明るいものになるでしょう。そして彼等の笑顔が私の人生も明るくしてくれています。
お子さんのチック症状が著しく改善した場合、親御さんから大変感謝される事があり、そのような時は私自身もとても嬉しく思いますが、同時にお子さんが一生懸命に努力されていた事を忘れないで頂きたいです、お子さんの努力を是非もっともっと褒めてあげてください。自尊心を高めてあげる事でも、当事者は自ら更に前に進むことが出来るようになります。