チックの行動療法体験談/改善事例『拮抗反応を試してチックにならずに済んだ時は本当に嬉しくて凄い!!と思いました。人生が180度変わりました。』大阪府18歳男子
当会のチックへの認知行動療法(ハビットリバーサル・呼吸法・CBIT・ERP)を受けた、18歳男子 T君(仮名)とそのお母様より、オンラインセッションのご感想を頂きましたので投稿いたします。
Q1.認知行動療法を受けてみようと思った理由を教えてください。
A.認知行動療法の事は以前から、なんとなくは知っていましたが、息子の病院ではやっていないとの事で、区役所でも分からないと言われ、どこで誰に相談したらいいのだろう?と思っていました。
中学を卒業した頃から、息子自身が自分の事を客観的に見れる様になり、トゥレットやチックの事を積極的に調べるようになりました。
将来の事も考えられる様になり、認知行動療法をするなら今だよなぁと思っていた時に、Twitterで今回の事を知り「今このタイミングしかない!!」と思いメールさせてもらいました。
Q2.セッションを受ける前のお子様のチックの種類や状態を教えて下さい。
A.舌を噛むチック…小5位から、舌(右側)を噛むクセが出てきました。きっかけは食事中にたまたま噛んでしまい、キズになった事でした。
割り箸を咥えたり、ハンドタオルを咥えたりして対応しましたが、結局外して噛んでしまうのでキズは中々治らず、どんどん酷くなりました。
学校も休みがちになり、家でも痛くて叫びまくって大変でした。
3ヶ月くらい続いて治まって、また何ヶ月かしたら始まるというのを繰り返していました。
2年前位に全く症状が治らず、本当に辛そうで、本人も家族もヘトヘトで、色々調べて藁をもすがる思いで阪大病院にお世話になる事になりました。色んな厚さや硬さのマウスピースを試してもらいましたが、結局奥歯を4本神経を抜いて削ってもらい、めちゃくちゃ薄いマウスピースを上下付ける事でクセが出ず過ごせています。
両手の小指を折ってしまうチック…中1くらいからずっと続いてるクセで、折らない様にガーゼとテープでグルグルに固定して対応していました。固定していると安心感で折りたいという衝動はおきないようでした。
お風呂あがりにガーゼを交換するんですが、衝動がくる前に、とにかく大急ぎでやっていました。
日中は濡れるのを嫌がり手洗いなどちゃんとできていませんでした。
ズーム(セッション)が始まる1ヶ月前位に、バスケの選手が使う指用のサポーターを見つけて使っていました。これはマジックテープになっているので、何個か多目に買って、いつでも交換できる様にしていたので、ガーゼの時よりは生活がしやすそうでした。
目を突くチック
鼻をグーパンチするチック
身体を痛くなるまでよじるチック
歯ぎしりチック
などなど色々次から次へ。
Q3.ホームワークを行っている時のお子様の様子を教えて下さい
A.特に大変な事はなく、前向きに出来ていたと思います。
初めて自分の事をわかってくれる存在に出会えて、共感してもらえて本当に嬉しそうで真面目に取り組めました。
ただ、90分のズーム会議は時々寝そうになりながらも頑張っていましたが(笑)
Q4.セッション期間中のお子様のチックの変化を教えて下さい。
A.まず指のサポーターを外す事にチャレンジしました。
もう何年も外すことが出来なかったので、絶対無理やわぁ…と思っていたのですが、いとも簡単に外せて3ヶ月たった今も外せたままです。
自分でもすごくビックリしていました。谷さんスゲ〜って家族でいいました。
この事が自信に繋がった様で、その後のマウスピースを外すなど、今まででは考えられない事が出来るようになりました。
Q5.セッション開始3ヶ月後の現在のチックの状態を教えて下さい。
A.指を折るクセ、舌を噛むクセ、鼻をグーパンチするクセは完全になくなっています。
前駆衝動はある様ですが、拮抗反応で乗り切っている様です。
ただ、歯ぎしり、息を飲み込むクセ、目を突くクセ(これは少しだけですが)などが出ていますが、今までの息子とは違って、谷さんの教えのおかげでオロオロする事なく対応出来ている様です。すごい成長だと思います。
Q6.セッションを受けたお子様の感想を教えて下さい。
Q7.認知行動療法を受けたお母様の感想を教えて下さい。
A.息子が自分の事を理解して将来の事も考え始めたので、何かを始めるなら今やな~と思っていた時にTwitterで今回の事を知り「今だ!!」と思い申し込みました。
呼吸法は知っていたので試していましたが、拮抗反応は初めて聞いた言葉でした。説明を受けた息子が「そうそう」と納得していたので、ただチックが出ているのではないという事がわかり、対策ができる事を知りました。
今まで私達は、チックが出たら痛くないように、少しでも困らない様にする対策しか出来ませんでした。
なので、ほんの気休めにしかならず、チックの症状が改善する事はありませんでした。
拮抗反応を試してチックにならずに済んだ時は本当に嬉しくて凄い!!と思いました。
この認知行動療法は本人が理解してやる気がないと成立しないと思います。なので、今回は本当にタイミングがピッタリで効果も出たんだと思います。何より当事者である谷さんの言葉は全て説得力があり、息子も私達も納得する事ばかりでした。
今まで出会った、何人ものお医者さんや相談員の方では得ることが出来ない事ばかりで、息子は初めて共感者に出会えて本当に嬉しそうでした。
お忙しい中、息子のために時間を作って頂き本当に本当に感謝しています。ありがとうございました!!
Q8.チック・トゥレットでお悩みのお母様方は大変多くいらっしゃます、その様な方にお伝え出来る事がもしあれば、ご記載お願いいたします。
A.息子の場合は、おじいちゃん、おばあちゃん、親戚、マンションの管理人さん、マンションの住人の皆さん、小学校、中学校の友達や先生など、まわりに理解してくれる人がたくさんいたので、とても恵まれていたなぁと思います。
とは言え、舌を噛むクセが止まらずギャーギャー泣き叫び続けていた時期(小5)はオロオロして、よく息子と一緒に泣いていました。
いつまで続くんやろ?どうしたらいいんやろ?と悩んでは泣いてばかりいました。SNSでチック、トゥレットの事を調べ始めたのもこの時期でした。息子の様に困っている人がたくさんいる事がわかり少しホッとしました。
息子は、小5~小6の時期が1番しんどくて、反抗期も重なったのか壁にたくさん穴があきました。
救急車を呼んだ事もあります。
本当に親子共々たくさん泣いた時期でした。
中学校に入りスポーツをやり始めてからは少し落ち着いて来たように思います。年齢とともにクセが無くなるわけではありませんが、対処の方法とか感情のコントロールが少しずつ出来るようになったんだと思います。
チック、トゥレットはワンオペ育児では、絶対に親子共々ダメになってしまいます。誰かに相談して、色んな人と関わる事が大事だと思います。
Q9.最後にトゥレット当事者会へのご要望やご提案がもしあれば教えて下さい。
A.何かをして欲しいとか、よく分かりませんが、今後も関わって頂けたらなぁと思います。
これから先、私達親が居なくなった後も安心して生活できる様に、いつでも相談できる窓口があるといいなぁと思います。
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T君、T君のお母様、過去の貴重なご経験、認知行動療法(ハビットリバーサル・呼吸法・CBIT・ERP)のセッションに関するご感想をお答え頂き有難うございます。
お母様のコメントにもある様に、T君のチック症状のピークは小学5、6年生の頃だったのかもしれません。
チック症状は、10歳から12歳頃に症状のピークを迎え、大波小波を繰り返しながら成長と共に徐々に軽減していく場合が多いと言われたりもしますが
舌噛みのチックや体への打撃のチックなど、自傷系の運動チックがある場合、適切な対処法を知っているかそうでないかでは、その後の当事者のQOL(生活の質)に与える影響は大きく異なります。
チックが出ないように、出ても体へのダメージをできる限り軽減する為に、マウスピースやテーピング、グローブやヘッドギア、リストバンドやゴーグルなど様々な防具を身に付けている方もいらっしゃると思います、かつての私もそうでした。
チックを対処する為に行っていたことが、二次的な障害となり、強迫や強い不安を引き起こしてしまう場合もあります。
T君の場合、小指を折ってしまうチックなどは、ピーク時よりいくらか既に軽減していた可能性がありますが、当時のチック症状に対する恐怖が、防具を外す事に対する強い不安を引き起こしていたと言えるのかも知れません。
防具を外した瞬間に、不安が引き金となる強い前駆衝動に襲われ、チックが制御できなくなる
この誤った認知、本来はターゲットのチック症状に関係する前駆衝動は当時程強くはないはずなのに強く感じてしまい、激しいチックが出てしまう。
チック症状への認知行動療法であるハビットリバーサルや呼吸法(CBIT&ERP)を行う事で、その不安とチックの前駆衝動を克服する事が出来たのだと思います。
余談ですが、イラストの様にT君はゲームが大好きです、ゲームはチックによくない、チックが悪化するとよくいわれています
確かにゲーム中チックが悪化する子は多いと思います(ゲーム中は逆にチックが少なくなる子もいます)。
脳が興奮、ゲームを上手く進められないイライラ、対戦ゲームで負けてしまうストレスなど、これらが悪化因子となりチックが増えてしまう可能性も(視覚情報、ブルーライト等が良くないとも言われたりしますが定かではありません)。
私の考えは、ゲームがダメなのではなく、チックが出やすい状況、つまりチックが多く出続けている状態がよくない
チックは習慣化します
その習慣化を防ぐ事が大切です
だから酷くチックが出やすいゲームはよくない
ゲームに限らずその様な状況は出来るだけ避けるか改善させる
つまりこれらが環境調整の考え方。
しかしながら、チックが出やすい状況を避けたが、そもそものチックが改善されない場合、私達はチック症状がありながらも様々なストレッサーの影響を受けながら日常を送らなければなりません。
何が言いたいかと申しますと、当事者はチック症状の度合い、そしてとある年齢から、チックがありながらもストレスマネジメントを自ら行わなければならないということ。
今回のセッションにおいて、T君にゲームを制限させることは一切行いませんでした
一日10時間以上プレイする事も普通です
その代わり、ゲームをしながらチックやストレスをコントロールする訓練を行います。
当会のセッションは、当事者の年齢や個々の状態に合わせ必要なセッションを行うよう心掛けています
チックを改善させるだけではなく、少しでも社会に適応できるよう、様々なストレスがありながらもチックを管理コントロールする為のセッション
年齢が上がるにつれて、ゲーム以上のチックトリガーは沢山あります、その頃までにチックが自然治癒されていけば良いのですが、そうでない場合、対処の仕方を変える必要がある場合も
T君のセッションでは、今後起こり得る様々なストレスに対処できる様、あえてチックが出やすいゲームを制限する事は行いませんでした。
チック症トゥレット症への対処は本当に個々に異なるので、当事者それぞれにあった治療法、セッションを工夫する事がとても大切です。
最後の質問にお母様がお答え下さったように、当会の最終目標は当事者の自立です、親御さんがいつまでもお子様のサポートをできるとは限りません、いつかは自らの力で歩んで行かなければなりません。
それまでにチック症状が完治、若しくは生活に支障のない軽度なレベルに改善していれば問題はありませんが、そうでない場合、しっかりと自分でチックを対処できる術を身に付けておく必要があります
自己対処が出来ていれば、もしも成人後に生活に支障のあるチック症状が残っていたとしても、しっかりと自立していくことが出来ると私は思っていますし、現実にその様な方は大勢いらっしゃいます。
自立の為の支援が必要な方への体制作りも、当会の今後の課題の1つとして、しっかりと受け止めさせて頂きます。
ご感想誠にありがとうございました、ここからが本当のスタートです、困ったことがあればまたいつでもご連絡ください。
トゥレット当事者会 谷