❶チックへの認知行動療法を受けてみようと思った理由を教えてください。
チックのきっかけは小学校受験のストレスでした。小学校受験の試験1ヵ月前から急に症状が出始めました。受験が終わりすぐに脳神経外科・小児思春期外来のある都内大学病院へ受診し検査・通院を開始。2ヶ月程度、漢方(カンパクダイソウトウ)を服用。その後専門病院に変更した際に漢方(カンパクダイソウトウ)の服用を辞め、ドバストンの服用を開始しました。現在も服用中です。
環境の変化やストレスの影響で強く症状が出たりしていたので、家庭ではなるべくストレスがかからない環境作りをしていましたが、環境の変化等で悪化したり落ち着いたりを繰り返している状況でした。チックが1年以上続き様々な症状が出ている中、症状も強くなってきました。娘の体に負担がかかっているのではないか、今後症状が悪化していき学校生活に支障が出てくるのではないかと不安になりました。そこで何か対処方法はないかと思い調べたところ「認知行動療法(CBIT)」があることを知り受けてみようと思いました。
❷セッションを受ける前ご不安だったことなど何かございますか?
始める時の年齢が6才10ヵ月だったため、本人がCBITを理解し実践していけるのか、チックと向き合うことでチックを気にしすぎてしまい、逆にストレスにならないかが不安でした。本人には不安にならないように前もってCBITを受ける理由を伝えました。(チックで困らないようにどうすればいいか良い方法を教えてくれるよと伝えました。)
❸セッションを受ける前のお子さんのチックの種類や状態を教えて下さい。
セッション前は様々なチックの症状がありました。但し全てが同時に出るのではなく、何種類かの症状が時期によって入れ替わっていくような感じでした。特にテレビを見ている時やゲーム中、食事中に多かったです。(多い時で1分間に2〜3回)環境が変わったりストレスがかかっている時に症状が強くなり回数が増加しました。また、家でリラックスしている時にも頻繁に発生していました。運動している時は症状はほとんどでませんでした。
【主な症状】
- 手や足がビクン・ブルブルと動く(手:食事中箸をもっている時など何か持っている時、足:椅子に座っている時や就寝前布団の中で)
- 何か手に持っている物を何回も強く握る、急にぱっと離すような動作
- 歩行時に身体が硬直(急に止まってストップする)したりジャンプする
- 指先の皮剥き
- 音声チック(「あ」「ん」など声が漏れてしまう。口から「シュッシュ」「フッフッ」、咳払い、鼻をフンフン鳴らす。)
- 口をパクパクしたり、口を大きく開ける動き、歯をカチカチ鳴らす
- 白目にしたり、目をパチパチする
- 縦に細かく首振り
- 上半身に力を入れ急に体をそらすような動きや上半身がビクンと動く
❹セッションやホームワークではどの様なことを行いましたか?
初回はCBITについて丁寧にご説明いただきました。事前に病歴や症状はメールでお伝えしていましたが、
改めて通院状況、症状や頻度などお伝えし再確認しました。
そして、まずは環境を整えて少しでも症状が出る環境やストレスをまずは取り除くことが大切であることを教えていただきました。(例えば娘の場合、指先の皮むきが当時酷かったので絆創膏を貼る、椅子に座り足がブラブラしている状態で足がビクンと動くのであれば足がつく椅子に変えるなど)
その後のセッションでは、どんな状況でチックが出やすくなるのか、増えるのか、今一番気になるチックは何かなどを一緒に確認しました。
娘の場合様々なチックの症状があったので「今一番困っている症状」を1つピックアップしてターゲットにし、チックに気づくことから開始しました。チックの出やすい環境を設定し(例えば娘の場合、TVを見ている時やゲームをしている時)気付きのトレーニングを行い、気づいたら人差し指を立てる。このようなトレーニングをホームワークで楽しくできるように「お母さんと○○ちゃんと競争だよ〜」と言ってゲーム感覚で行いました。先生は、ターゲットを1つ決める時も必ず娘を尊重し娘が一番困っている症状をヒアリングしてくださいました。
次にハビットリバーサルトレーニングに移ります。その際もセッションではチックの症状がどのように動いているのか、ターゲットのチックに対してどのような動きをすれば症状が出ないか等、先生、娘、私と3人で分析し丁寧に確認していきました。
また拮抗反応の動きも娘が授業中に自然にできる動きを考え、この動きだったら学校でできるかな?など声がけしていただき本人が納得した状態で始めました。
娘の場合は、イライラしたりすると症状が増加する傾向もあったため、リラックス法として複式呼吸や筋地緩法(筋肉を緩める方法)を毎日就寝前に行いました。※複式呼吸は子供があきないように、人形をお腹に乗せ意識できるよう工夫してくださいました。
❺セッションやホームワークを行っている時のお子さんの様子を教えて下さい。
娘が学校から帰宅し夕食後のセッションですと、疲れや眠さもあって集中が続かなかったこともありました。その際は、先生がリラックスしていいよ〜と声がけしてくださったりと上手く誘導していただきました。
セッション中は、自身で無意識にコントロールしているのか、先生の前ではほとんど症状が現れませんでした。そのため、症状を動画に撮りメールで送って見ていただきました。
トレーニングでは、本人のモチベーションが続かないとなかなか上手くトレーニングが進まなかったり、時々ストレスになってしまうことでイライラしてチックが増えるといったこともありました。その際は、都度メールで先生に相談し、負荷がかからないようアドバイスいただきました。
娘の場合、もともとチックへの気付きに敏感だったこともあり、
気付きのトレーニングをするだけでターゲットの症状が治っていくという効果がありました。
❻全セッション終了後のチックの変化を教えてください。
娘の場合は、チックの気付きのトレーニングを行うことで、チックを自然と意識するようになりターゲットのチックが軽減され、他のチックが現れるということが繰り返される状況です。セッション終了後もこのような状況が続いており、様々なチックが悪化しないように習ったことを無理のない範囲で続けてます。
複式呼吸の練習の成果で、就寝時によく出ていた音声チック(「あ」「ん」など声がまれる)が鎮まりました。また、リラックス効果により以前よりも寝つきが良くなりました。
❼セッションをお受けになられたお子さんの感想がもしあれば教えて下さい。
・「常に意識するのはできないし拮抗反応は難しい。うまく出来ないこともあるけどムズムズする時にどうしたら良いか方法が色々わかってやって良かったです。」
・最後のセッションが終了したあとの娘の一言が印象的でした。「先生は家族だからセッション終わるの寂しい、、、」セッション中、先生が娘に共感しやさしく接してくださったので家族のように接することができたのだと思います。
❽チックへの認知行動療法に対するお母様の感想を教えて下さい。
認知行動療法のセッションを受けて良かったことは、今後のチックと上手く向き合うための大切な考えやポイントを理解できたことです。それは、今本人が困っていることは何か、トレーニングは強制はしない、
必ず本人の意思を尊重することが大切であること。
チックとうまく付き合いながら生活していく、チックは出してもいい・悪いことではない、受け入れる環境を作り、頻度が増してきたらそれ以上多くならないように拮抗反応で沈静させられるよう親が子供に促していくことが大切であること。これらをセッションでアドバイスいただきながら親の認識がとても大事であることを実感できました。
また大変だったことは、毎日のトレーニングです。6才の娘にとって様々なチックを意識することがストレスに感じることもありました。娘の場合、学校でムズムズする感覚に違和感があったり、チックを出しすぎて体が疲れることがありました。ただ、お友達に指摘され嫌な思いをすることがないので、学校でチックが出ることに対してさほど困っていない様子でした。そのため本人がトレーニングを続けるモチベーションを保つことがとても大変でした。
そんな中、先生は毎回セッションで娘の一番困っていることは何かを本人にヒアリングし共感し無理のない範囲でアドバイスしてくださったので、娘も私も続けられることができたと思います。
❾チックには様々な治療法がありますが、チックへの認知行動療法はどの様な方にお勧めできますか?
チックの症状で悩まれている方(本人、親御様)。当事者だけでなく、世間にチックへの理解や対処方法が普及されると良いと思います。
❿最後にチック・トゥレット症でお悩みのお母様方は大変多くいらっしゃます、そのような方にお伝えできることや、アンケートにない内容で、もしお伝えしたいことがあればご記載をお願いいたします。
私自身、娘の様々な症状が気になり本人以上に気にしすぎてしまうこと、また、子供の将来のことを考えるととても不安になり子供のチックに過敏になってしまうことが多々ありました。
チックを気にして子供のやりたいことを我慢しなければならない状況は避けたい、子供の体調に負荷がかからないように軽減できる方法はないのかと日々悩んでいました。同じように悩まれている方はたくさんいらっしゃると思います。そのような方はぜひ認知行動療法を受けてみていただきたいです。
チックをコントロールすることで軽減できると知っていれば、子供、親にとっても安心でき希望を持つことができると思います。個人差もあり必ず効果があるとは限りませんが、悩みを聞いてアドバイスしていただける先生がいるだけでも心の支えになると思います。